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なにはなくとも

 わたくしの相棒が久しぶりに東京隣県の実家に帰り、「ほどほど田舎」生活を満喫してきたそうです。東京に比べたら万事余裕があるし、食べ物は新鮮でおいしいし、何といってもクマが出るほどではない(出るのかな?)穏やかな自然に囲まれての生活というのは良いものですね。

 わたくし自身、農業にずっと関心を持ち続けていますし、いつか、

 「農のある生活」

 をしたいと強く思っています。ところが、昨日、相棒が帰ってからの言葉。

 「『農のある生活』というけれど、それは今、『農』と関係のない人が言うことであって、生まれてこの方『農』という人たちはそんなことは意識しないだろうね」

 然り、然り。私のはまさに「想像農」でして、菜っ葉の虫一つとったことがないのに、頭の中では菜の花、桃の花が咲き乱れる自然農園が出来上がっちゃっているわけですからねえ。でも、いつかは地に足を着け、手を着け「農」に取り組みたい、と思いを強くした次第です。

 「整体」というのも、もともとの正しい体の状態のことを言うわけですから、「整体のある生活」というのも、ことさら言い立てるのは不自然なことではあるのです。

 わが師が言うように、

 「整体なんていう言葉は知らなくても、ちゃんと整体的に生きて、死んでいっている人は世の中にたくさんいる」

 わけですからね。でも、現代人の体の使い方、生活のしようというものが、本来の姿とはかけ離れている部分が多いので、啓蒙というとちょっと傲慢なので、まあ火の見櫓に登っておーいおーいと叫びつつ鐘を鳴らしているというのが、少なくとも私の行なっている井本整体の指導者たちなのです。

 さて、「農」といえば、

 「21世紀は環境の時代」

 と言うのが流行になっているようですが、間違いなく今世紀は、

 「食料とエネルギ-の時代」

 となることでしょう。まあ、これは、今世紀に限らず人類普遍の課題です。

 私も含め大多数の人間は、外敵に命を脅かされることなく、雨風、寒さをしのげる家に住み、死ぬ時まで食べることができて、それに愛する家族と友達がいて自由に行き来できれば、大満足……というか、少なくとも大騒ぎにはならないはずです。
 ところが、こういう基本が崩されたり、崩れるのではないかという恐れを持ったりすると人間は闘ってしまうのでしょう。そして、戦争になってしまえば、あーだこーだという理屈は吹き飛んで、人間は普通の人間ではなくならざるを得ないのです。ですから、戦争は絶対に避けなければならない。そして、戦争を防ぐためには、アホらしいようでも軍備は必要でしょう。でも、一番大切なのは、全世界の人々にそれなりに食い扶持を持たせることのように思います。

 「飯を食わせろ。話はそれからだ」

 というのは、実感があると思いませんか。僕はそうだなあ。

 学校の歴史の授業で、ローマ(?)の民衆(?)が暴動を起こした時の要求が、

 「われわれにパンとサーカスをよこせ」

 だったとかいう話がありましたね。これを読んで

 「パンはわかるけど、サーカスというのはどうか?」

 と思いませんでしたか?それとも何かなるほどという理由があるのでしょうか。

 確かに、私も色々な娯楽を知ってしまっています。近頃は、映画や芝居を見るのが大好きですし、スペースに余裕があれば、漱石全集、鷗外全集、露伴全集、乱歩全集(以上、できれば旧仮名遣い版)、それから池波正太郎全集に、志ん朝DVD全集なども揃えたいものです。
 でも、いざなーんにもないということになったら、たとえば、石ころ数個と地面があれば、一日中楽しく暮らせる自信もあるのです。みなさんもそうだと思う。

 それにそういうことになったら、

 「ケンケン道」

などというものが生まれるのは一事を追求して止まない日本人として自然の成り行きでしょう。

解説者:
 「うーん、今の第二ケンから第一パへの『うつり』には、いま一つ『はり』というものが欠けていましたねえ」

アナウンサー:
 「そうですね。確かに先代のパには思わず観衆を引き込む気合いと間があったように思います」

解説:
 「私が亡くなる直前の先代にお聞きしたところでは、第二ケンから第一パにうつる一刹那、夏のまだ明けやらぬ泥田で開く蓮の花を思念する、というのが口伝だそうです」

アナウンサー

 「なるほど……」

 おっとっと、また長くなりました。

 つまり「生活の基本はなにか?」というようなお話でした(ような気がする)。

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